いまは、女性の3人に1人ががんになる時代。とはいえ、将来なるかどうかわからないがんのために、元気なうちから万全の準備ができている人は少ないでしょう。働き盛りで、育児真っ最中の40歳で乳がんになったファイナンシャルプランナー(FP)黒田尚子さんに、30〜40代からできることを伺いました。

がんの治療は「カラダ」「ココロ」「お金」の三つ巴

「昔、がんと言えば不治の病でしたが、今では治る病気になりました。しかし、治るようになったからこそ、がんにまつわるお金や仕事など社会経済的な問題が注目されています」

ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん曰く、がんの治療は「カラダ」「ココロ」「お金」の三つ巴だそう。

「お金に不安があると治療に専念できず、精神的にも不安定になってきます。だからこそ、肉体的にも、精神的にも、お金はとても重要。お金をかけたくない人は、ならないように日頃からメンテナンスをするしかありません。定期的に適切ながん検診を受けて、適度な運動をして、塩分のとりすぎに注意して…ちなみに、乳がん患者にとって肥満は再発のリスクを高める要因と言われています。ですから、私は命がけで基礎代謝を毎日チェックして、カロリーコントロールしています(苦笑)」

でも、がんになる時は、どんなに注意していてもなるもの。

「その時に『知っていたら準備できたのに…』と思うのが一番のNGパターン。現実を知って、準備しておくことが大切です」

目安は年100万円と言われるがんの治療費ですが、「病気に限らず、リストラや災害など、イザという時のためのお金として、生活費の半年から1年分くらいは、預貯金として持っておけば安心」とのこと。

私はあまり稼いでいないから、病気になっても大丈夫!と思う人もいるかもしれませんが、それは大きな間違いだと、黒田さんはいいます。

「女性の場合、家計が苦しくなるとまず自分のものから削っていきます。しかし、自分が倒れたら、家事や育児、介護など、足りないマンパワーをアウトソーシングしないといけない。また、妻の収入が家計に補填されている割合が圧倒的に高いのが、教育費と住宅ローン。この2つは、毎月かならず出ていく固定費で、収入がなくなっても、基本的に待ったがききません」

子どもが高校生、大学生になると、自転車操業状態で、ママのお給料をそのまま突っ込んでいる家庭は少なくありません。また、住宅ローンが返済できなくなって、家を手放した人も実際にいるそう。

「がん告知されると、みんな気が動転して、最初は『お金より命!』とすぐに仕事を辞めたりしますが、半月程度なら多くの場合、有給休暇などでまかなえます。でも、ある程度落ち着いてきて、今後の治療方針を聞き、それが長引くとなると『手持ちのお金で大丈夫かしら?』と心配になってくる。その頃には、自分の今後の状態や、その他のこともわかってくるので、いろいろ決めるのは治療方針が決まってからで大丈夫」

まずは、公的保障の理解や保険の見直しから

がんになる前にやっておくことは、まずは健康保険や勤務先の福利厚生制度など公的保障の内容を知っておくこと。

そして、がんと切っても切り離せない保険について見直すこと。特約なども含めて、医療保険は9割近く、がん保険は約6割の人が加入しています(※出所:生命保険文化センター「平成30年度『生命保険に関する全国実態調査(平成30年12月発行)』)。

「医療の進歩によって、がんといえども入院期間は短期化の傾向にあります。そのため、入院が主な要件となっている医療保険では、思っていたような給付金が受け取れない可能性があるのです。がん治療に特化したがん保険の方が、がんになった時には実用的で、心強いかもしれません」

では、保険の見直しをする時にはどういった点に気を付ければいいのでしょうか?

「がんは治る病気になり、新しい治療法も続々登場していますが、それらはみな高額です。お金があればよいのですが、お金がなくても『〇〇病院の△△先生がやっている治療を受けたい』と、新幹線に乗ってでも治療に通う人もいます。でも、お金は湧いて出るわけではありません。治療の選択肢が増えたのは嬉しいけれど、望めばどんな治療も受けられるからこそ、自分でリスクコントロールする必要があります。最先端の医療を受けたいなら、経済的に担保できるよう、備えておかなければなりません」

がん治療は進化しているので、がん保険もそれに合わせて進化しています。

「診断給付金は出るか、再発に備えられるかなど、がん保険も時代とともに変わっています。とはいえ、その条件全てが自分に全部が必要かといえば、それはその人の考え方次第。たとえば、今はがんになっても加入できる保険も登場しています。しかし、それは再発したときに備えるものですから、私は加入しません。だって、再発したくないですから(笑)。もちろん、再発したとしても、現在加入中の保険で備えられないか、貯金でまかなえないかも検討したうえのことです。でも万が一の時のために加入するというのも考え方としては◎。それこそ、どちらもその人の価値観です」

しかし、いくら保険に加入したと言っても、保険は条件に合わないと支払われないので、貯金は必須だと黒田さんはいいます。
「両方のメリットとデメリットを考えて、‘保険or貯金’ではなく、‘保険and貯金’がベストです。ただ、がんはなってみないとわからないことばかり。お金のことは、見栄を張らずに、病院で聞くのが一番。医師に聞きづらければ、看護師さんやソーシャルワーカーさんに聞けばOK。制度は変わるし、情報は常にアップデートされているので、すべての情報を自分で仕入れる必要はありません。誰に聞けば最新の情報が入手できるのか、相談窓口を把握しておけば十分です」

準備の仕方で、いざという時の心構えが全然違ってくるというがん治療。

「今はおひとり様も増えているし、実家に戻るというのも選択肢です。でも、あれこれ心配しても始まりません。最悪の事態を考えて準備して、準備できたら最善の状態をイメージして生活する。なったらなったとき!と開き直ることも大切です」

今できることから準備して、そこから先は毎日を楽しく生活していきたいですね。

(プロフィール)
黒田尚子(くろだ・なおこ)
1969年富山県生まれ。立命館大学法学部卒業後、92年日本総合研究所に入所。在職中に自己啓発の目的でファイナンシャルプランナー(FP)資格を取得し、98年FPとして独立。2009年12月乳がんの告知を受けながらも仕事を続け、2011年乳がん体験コーディネーター資格を取得。現在は、自らの実体験を元に、がんをはじめとした病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行っている。著書に『がんとお金の本』(ケイビーシー)、『親の介護は9割逃げよ』(小学館文庫)など多数。2020年2月に『病気にかかるお金がわかる本(仮)』(主婦の友社)、同年3月に『三大疾病ライフプランハンドブック(仮)』(金融財政事情研究会)を上梓予定。

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