人生初のマンモグラフィーの検診で、乳がんが見つかったファイナンシャルプランナー(FP)の黒田尚子さん。そのとき40歳で、お子さんはまだ5歳だったと言います。お金の専門家として、がんサバイバーとして、多くの女性に寄り添ってきた黒田さんに「がんとお金」について、お話を伺いました。

女性のライフプランには、健康とお金が大きく関係

「女性のライフプランには、健康とお金が大きく関わっているとしみじみ感じます」というFPの黒田尚子さん。

32歳で結婚、35歳で出産し、40歳で乳がんが見つかったときはステージⅡで、5cmの大きさになっていたそう。

「3歳を過ぎても、完全には卒乳できてなかったんですが、ある日から子どもが左胸のおっぱいからしか飲まなくなったんですよね。乳腺炎かと思って乳房マッサージにも行きましたが、特に何も言われず…。後で考えたら、あの時からがんができていたんだと思います。女性は、出産など、自分の体と向き合う機会があります。その時のサインを見逃さないことが大切。体と向き合うことは、お金に関わってくる。例えば、病気も早く見つかれば、その分かかるお金は少なくて済みます」

黒田さん曰く、最近相談が増えている不妊治療なども、自分の体とお金が直結するものの一つ。

「女性には、がんに限らず、生理不順や子宮内膜症、不妊治療など、就労を阻害する病気や治療がたくさんあります。体の不調=内部疾患から、メンタルに不調をきたし精神疾患になる例も少なくありません。病気になると治療費だけでなく、働けなくなるため収入源もなくなります」

しかし、がんや病気になる前から、なかなか準備をしようと思っても何から手をつけていいのかわかりません。

「いざという時、ベースになるのは公的保障です。一定額を超えた分が還付される高額療養費制度や、今加入している健康保険でどういうものが賄えるか知っておくことが大事です。会社員の場合、健康保険組合から法定給付以上のものが付与される付加給付があることも少なくありません」

外国人従業員も多いある会社では、日本人以外の社員が真剣に就業規則や福利厚生のしおりを読み込んでいる姿を目にすると言います。国民性もあると思いますが、どういう制度があるか知った上で、自分の権利もきちんと把握しておいて損はありません。

画像: 女性のライフプランには、健康とお金が大きく関係

「がんでかかるお金は、
①がんの種類(どこにできたがんか)
②がんのステージ(どれくらい進行しているか)
によるところが大きいとお伝えしていましたが、今はそれに
③その人の医療に対する価値観
も金額を左右するとアドバイスしています。これは、お金のあるなしに関わらず、本人がどこまで治療したいかです」

がんでお金がかかるのは医療費ではなく治療費

がん経験者を対象にした調査等から、がんの治療費は年間100万円が目安とお伝えしています。
もちろん、実際の費用はケースバイケースですが、100万円と聞くと、意外に準備ができそうだと思う人も多いのではないでしょうか?

「がんになる前は、みなさん『がん=医療費が高い』というイメージを持っていると思います。しかし、医療費は健康保険の対象になるものであれば、高額療養費制度や医療費控除などもあり、現実にはそこまでかかりません。実は、がんでお金がかかるのは、病院に支払う医療費だけではなく、それも含めた治療費なんです」医療費は健康保険の対象になるものであれば、原則3割の自己負担で済みますし、高額療養費もあり

黒田さんによると、がんになると「病院に払う医療費」「病院に払う医療費以外のもの」「病院以外に払うもの」の3つの支出があると言います。

例えば、個室にした場合の差額ベッド代は保険適用外。医療費ではないため、消費税もかかります。しかも、ホテルは1泊2日で請求されますが、病院は1泊2日だと2日分の差額ベッド代を取られます。これは医療費ではありませんが、治療にかかる費用です。

「医療の進歩によって、最近は入院期間がどんどん短くなっています。一方で、退院後、通院しながら治療する期間は長くなりがちです。人によっては、抗がん剤治療をした帰りは、体調がすぐれず、電車にも乗れないという方もいます。そうなるとタクシーを利用するため交通費もバカになりません。同じく、抗がん剤治療の副作用による脱毛を補うためのウィッグ費用や、家事を担う女性の具合が悪いと、どうしても外食やデリバリーも増え、食費もかさみます。がんは、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を維持するお金がとてもかかる病気です」

そして、大事なのは、がん保険で100万円賄えたとしても、それはあくまでも支出分だけだということ。

「治療で仕事を辞めたり、休んだりして、入ってくるお金がなくなるのががん治療です。収入を100万円程度に抑え扶養の範囲で働いている人の場合、がんに罹患して仕事を辞めれば、収入100万円がなくなり、トータルで200万円の差となります」

がんになったら、最低100万円と覚えておいて、定期預金などではなく、すぐ引き出せるようにしておくだけでも安心です。
また、仕事は安易に辞めないこと。
すぐに、続けられないものと決めつけず、治療方針が決まって、仕事と治療の両立ができるかどうか、医師や家族と相談したうえで判断するようにしましょう。

(プロフィール)
黒田尚子(くろだ・なおこ)
1969年富山県生まれ。立命館大学法学部卒業後、92年日本総合研究所に入所。在職中に自己啓発の目的でファイナンシャルプランナー(FP)資格を取得し、98年FPとして独立。2009年12月乳がんの告知を受けながらも仕事を続け、2011年乳がん体験コーディネーター資格を取得。現在は、自らの実体験を元に、がんをはじめとした病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行っている。著書に『がんとお金の本』(ケイビーシー)、『親の介護は9割逃げよ』(小学館文庫)など多数。2020年2月に『病気にかかるお金がわかる本(仮)』(主婦の友社)、同年3月に『三大疾病ライフプランハンドブック(仮)』(金融財政事情研究会)を上梓予定。

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